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「ワンタンらぁ麺 醤油 ¥990+味玉 ¥100」@らぁ麺 いしばしの写真祝日 曇天 11:40 先客6名 後客8名

〝そうだ、雲呑を食べに行こう〟

今にも結晶となって落ちてきそうな曇り空を見上げて、そう思った。

ワンタンと言えば、目黒の老舗店や浜田山の名店で研鑽を積まれた職人さんが独立された店が多く浮かんでくるが、本日はその系譜以外での店探しを試みる。

RDBのお店検索のキーワードに〝ワンタン〟と入力して地域を東京都にしぼり、オープン日順にするとこちらが挙がってきた。他にも屋号のユニークな糀谷の新店や、亀有の新店などもヒットしたが、午後から所用のある新宿へのアクセスを考えてこちらへの初訪問を決めた。

行くと決まれば11時半開店前の現着を狙ってみる。最寄りの南阿佐ケ谷駅には副都心線を新宿三丁目で丸ノ内線に乗換えれば25分程で到着予定だ。それを目指して10時半には家を出た。直線距離ならそう遠くはない南阿佐ケ谷だが、最安値のルートだと随分と迂回している気がしてならない。そんな不便さをボヤいていると予定より早く着いてしまった。

とりあえず店の所在地を確認しようと店先へと向かおうとしたら、駅前で二台のバスにすれ違った。何気なく見ると、渋谷〜南阿佐ケ谷間を結ぶ路線バスだったのだ。次回は乗換要らずのバスで来ようと心に刻んだ。

駅前を北向きにジグザグに進むとアーケード商店街に出た。アーケードがS字を描く珍しい商店街を少し進むと、こちらの看板が目に入った。開店の20分も早く着いてしまったので、商店街をぶらりとしてみようと歩いてみる。祝日という事もあるだろうが活気に満ちた商店街に驚いた。大手チェーン店もチラホラあるが、個人店が圧倒的に元気がある。JRと地下鉄をつなぐ商店街なので人通りも多く、散策が楽しすぎて気が付くと開店時間を過ぎていた。慌てて店先に戻ると先客もあり七番手と出遅れながら入店。

券売機の前でお目当てのワンタン麺に味玉を追加してカウンターに座り店内を見渡す。入口が総ガラス張りの明るい店内は、代々木上原あたりにありそうな洒落たカフェ風。隣り客の会話によると、ここはうどん屋の跡地で美味しかったけど地域に根付かなかったらしい。シビアな客層ゆえに商店街が活性化されるのかもしれない。そんな場所でオープンしたばかりのこちらは縦長の敷地に二分化されたカウンターのみで営まれている。そんな店内を本日は四人体制で回す。

厨房内の導線は距離もあり大変そうにも見えるが、各々が独立したスペースで作業が出来るので四人体制ならば問題もなさそうだなと、余計な世話を焼いていると着席して10分で我が杯が到着した。ここからは個性のオンパレードが続いていく。

第一の個性はラーメン鉢だ。口縁が大きく反り返った白磁の反高台丼にはオリジナル屋号があしらわれている。パスタ皿にも使えそうなオリジナリティのある器の中の姿は、不思議がてんこ盛りで渋滞を起こしている。その不思議をひとつひとつ解明するためにレンゲを手にした。

まずは器の口縁に書かれたロゴの下には鶏油とスープが二層になっているのが見て分かる。それ程にたっぷりと鶏油を湛えた少し霞みがかった赤銅色のスープをひとくち。レンゲでスープをすくったが、大半は油分が占めている。オイリーなのを覚悟して口に注ぐと、やはり油っぽさがリードする。真っ先にスープを飲んだ自己責任だが必要以上の油膜が口中を覆ってしまった。

何とか鶏油の下のスープの味を確認したかったが、どのようにレンゲですくっても油分が入り込んでくる。行儀は悪いが仕方なくレンゲ内のスープに、フゥッと息を吹いて油膜だけを吹き飛ばしてみた。すると鶏油が取り除かれた純粋なスープだけがレンゲ内に残った。そのスープを大切に味見してみるとサッパリとした旨みの丸鶏出汁に、醤油ダレの塩気や酸味と熟成した旨みなどが幾重にも重なりをみせる。穏やかだが奥深いスープが潜んでいるとは鶏油の影では思わなかった。

レンゲを箸に持ち替えて気分も新たに麺をいただいてみる。麺上げまで85秒くらいの中細ストレート麺は全粒粉を練り込まれ麺肌にはフスマの粒が見られる。箸で持ち上げるとゴワつきや、しな垂れるような感覚はなくベストな状態で提供されたと分かる。口に含むと箸先から伝わってきた感覚と変わらぬ食感が弾ける。程よく麺肌に溶け出したグルテンが口当たりを良くし、ジャストな茹で加減の麺を奥歯で噛むと香りや甘みの内麦の良さが最大限に溢れ出す。舌触りや歯応えの良い麺は口の中を跳ねて上あごや頬の内側をくすぐりながら喉の奥へと消えていく。店の奥には製麺室のようなスペースもあるが自家製麺ではないようだ。しかし食べ応えのある麺に一気にファンになってしまった。

具材は鶏出汁を意識した鶏チャーシューが部位違いで一枚ずつ。鶏ムネ肉は真空低温調理で小ぶりながらシットリと仕上がっている。もともと淡白な肉質なので、もう少し下味のソミュール液に香辛料が効いている方が味気なくならずに旨みが出せるような気がする。もう一方の鶏もも肉は香ばしく焼き目を付けられて、味付けも適度で薄すぎず肉質の噛み応えも良く軍配は後者に上がる。

ここで今朝から待ち望んだワンタンの登場だが四個入りでボリュームはまずまず。だがこれが第二の個性でもある。まずは見た目だが、レンゲですくうと肉餡の部分が平らに押しつぶされている。もちろん火の通りを早くする為だと思うが、せっかく粘りが出るまで練られた肉餡なのに押し潰される事で硬くなってしまったいる。この肉々しさが狙いなのだろうが、私自身はツルッと吞み込めるような雲呑が好きなので残念だった。不思議な点は下味にも感じた。香り付けや臭み消しに肉餡には香辛料を使われていると思うが、生姜や五香粉よりもバジル系の洋風な香草が前面に出ていた。確かにインパクトや驚きはあったが、親しみづらさも感じてしまった。またワンタン皮も餡を包んで重なった部分に熱が入ってなく硬い芯が残っているものがあった。薄い肉餡が火の通りが早いので皮が追いつかなかったのが理由だろうか。

第三の個性は追加した黄色い味玉だ。食べる前はウコンかサフラン由来の色だろうと思っていたが、香りを嗅いだだけで違うのが分かった。香辛料というよりは薬膳のような香りがする。いざ歯を白身にだけ立ててみるとウコンのような苦味がなく、サフランのようなクセも無く、漢方の香りだけがしたのでクチナシだと分かった。ほとんど味はしないのでウコンやサフランではないだろうと思う。※もし高価なサフランを使っていたなら申し訳ないです。これで不思議がひとつ解けたのだが、肝心の味玉の方は派手な色に騙されてしまった。出汁の旨みや香りが移った訳ではない少し塩味の効いた半熟ゆで卵だったので好みからは逸れて残念。もっと熟成した味玉を食べてみたいと思ったが、これがこちらのシンボルならば仕方ないと断念。

次は第四の個性の太メンマだ。二日に一度は日焼けサロンに通っていそうな褐色のメンマは濃い目の色どりだけなら良かったのだが、味付けも濃かった。食感は良いのだが噛むたびに内側から浸み出してくる醤油味の強さはアクセント以上のインパクトを感じた。味付けとしてはラーメン全体が穏やかなだけに余計に際立ってしまっていた。

薬味の中に第五の個性が隠れていた。鶏ムネ肉チャーシューの上に添えられた鰹の削節を食べてみる。舌に上に乗ると旨みがじんわりと染み出してくる。しかし鰹節のような魚介の旨みではないし、血合いの色も見られずに麻色に近い色をしている。あまり食感が良くないので飲み込むまでに時間がかかったが、最後の方になってようやく正体が分かった。噛んでいくうちに鶏出汁の旨味が無くなってきたが、それでも鶏の旨みが湧いてくるのだから鶏ムネ肉の鶏節だろう。旨みがあって出汁には向いていそうだが、食べるにしてもまとめて口に入れるものではなかったと反省した。

その他の薬味はシンプルで白ねぎの角切りと水菜が添えてある。白ねぎは熱変化で甘みを増して薬味冥利につきる。色みの水菜も食感を狙っての起用だろうが好みではなかった。しかし本来ならスープを飲み干すときに両手で丼を傾けて飲むのが好きなのだが、この丼の形状だとそれが出来ない。仕方なくレンゲでひと口ずつ飲むのだが、水菜を避けながら飲めるのでスープの邪魔にはならず助かった。

最終的には水菜以外は完食完飲していた。不思議な要素が盛り沢山で馴染みづらいラーメンだったが、逆に言えば随所にこだわりが見えるとも思えた。保守派な私には今ひとつしっくりこなかったが、このラーメンの中の味玉のように、この商店街の中のシンボルとなって根付いて欲しいと願う一杯でした。

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