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「地鶏わんたんめん ¥800+味玉 ¥110」@寿製麺よしかわ 保谷店の写真平日 晴天 10:55 先待ち14名 後待ち8名 後客多数

〝ニューオープン 探検記〟

確実に勢力を拡大している〝埼玉の雄〟である「寿製麺よしかわ」の都内二店舗目の出店のニュースを目にしてはオープン初日にも初訪問したかったのたが、千葉 袖ヶ浦で開催された夏フェスと日程が重なってしまい本日まで出遅れてしまったのだ。

大きな被害が続いている千葉県内での野外フェスの開催だけに賛否を問われる事になったが、改めて音楽の力を肌で感じて帰京した。二泊三日のフェス旅の最中には会場内で勝浦たんたん麺を食べただけなので、肉体が猛烈にラーメンを欲していた。

そこで夏フェス仕様の装備を自宅の洗濯機に放り込むと、直ちにラーメン仕様の服装に着替えて西武線直通の副都心線に乗り込んだ。現在の時刻は午後5時過ぎと昼営業だけのこちらへは明日の訪問予定にして、所沢のお気に入りのサウナ付きの宿泊施設での前乗り作戦を決行する。

ノンストップで40分程で着いた所沢駅はメットライフドームでのデーゲームが終わったようで、ライオンズのユニフォーム姿が多く見られる。こんな時のサウナの混み具合を心配しながら向かったが、思ったよりも応援帰りのファンは少なかった。どうやら大差で負けたようなので意気消沈して帰宅したのだろう。

いい歳して野外フェスでハシャギ過ぎ悲鳴をあげている肉体をサウナでしっかりとケアしようと思っていると、偶然にも身体を洗い終わって清めた時に18時からのロウリュの案内があった。その熱波師は元自衛官との事で〝アーミーロウリュ〟たる独自のスタイルで熱波を味わわせてくれるようだ。この施設では初めてのロウリュだったので、期待してタイミングを合わせて18時を待った。

ちょうどワンセット目のサウナが10分を過ぎる頃に、お待ちかねの熱波師が登場した。灼熱のサウナストーンにアロマウォーターをかけると、一気に室内の温度と湿度が上昇した。アロマの香りと熱気が室内に満ちた所で、熱波師がタオルを振り回して温度を均一に整える。一番奥の最上段に座っていた私がトップバッターで熱波の洗礼を受ける事になったが、アーミーロウリュと言うだけあって軍隊仕込みのスパルタがウリだった。握力を鍛えるハンドグリップや4リットルのペットボトルに水を入れたダンベルなどを使い、大きな掛け声に合わせて熱波を浴びるという斬新かつ恥ずかくもあるロウリュシステムだ。熱波としてはまだまだ修行が必要な熱波師だったが、ユニークで独創性のあるロウリュを楽しめた。サウナ上がりには、お決まりのウルトラジョッキ生ビールを楽しんでからベッドに入った。

野外フェスの疲れから日付が変わるのを待たずに眠ったので、翌朝は午前7時には朝サウナへと向かっていた。軽めの3セットをこなしてから朝食は摂らずに、この施設ならではの景色を見るためにある部屋へと向かった。それは〝鉄道ビューラウンジ〟という部屋で、眼下には所沢駅を発着する様々な車両を眺められるカウンターがあるのだ。そこでガタンゴトンと聞こえる電車の音をBGMに、コーヒーを飲みながら本日の作戦を立てた。

先日お隣の入間市でも新店情報が挙がっていたが、祝日の月曜日明けなので本日は定休日らしい。そんな中で帰路の途中駅の練馬でも新店情報があったのを思い出したが、こちらも同じく定休日だったので連食での新店めぐりは諦めた。

本日は単食なので気合い十分で向かう事になった「寿製麺よしかわ 保谷店」は、店名には保谷となっているが最寄駅は西武柳沢駅と違っているようだ。しかし移動ルートを調べてみるとバスを利用すれば徒歩移動が少ない手段を見つけて、午前10時のチェックアウトと同時に所沢駅に向かった。まずは西武池袋線で保谷駅まで13分程で着くと、南口バス停から西武バス 田41系統 田無行きに乗車した。普段からバスには乗り慣れているつもりが、乗車時に行き先を運転手さんに告げなければいけないシステムを知らずに呼び止められて恥ずかしい思いをした。予定では10分程で着くはずが、混み合っているバスは倍近くかかって最寄りの西浦バス停に着いた。そこからはコンビニのある交差点を左に曲がると、鮮やかなオレンジ色の看板が目に飛び込んできた。バスの遅れなどで現着が定刻5分前になってしまったので、すでに店先には大行列が出来ていた。徒歩移動を避けて選んだバスルートだったが、大きく出遅れてしまった事を後悔した。現着と同時に定刻を待たずに早開けとなり先人方が店内へと歩みを進めていくが、やはり一巡目は逃してしまい二巡目を店頭で待つ事になった。

店先には煮干しの香りが漂っており食欲を刺激してくるが、夏の終わりと言えども陽射しを遮るものがない店頭での待機は熱々のラーメンを食べる気を失わせる。しかしこんな時も私の身体を守ってくれるのが日傘で、今年の夏の待ち時間では何度も助けられた盟友である。そんな〝日傘男子〟の本領を発揮しながら、開店祝いの花に囲まれて入口の扉に貼られた写真付きのメニューから品定めをしておく。その写真メニューの中に系列店でも主軸商品であるメニューもあるが、明らかに差別化を図られた新メニューを見つけると本日のお題は決まった。こちらと言えば鮮魚を使ったサイドメニューも定番として用意されているが、ラーメンだけに集中する為にご飯物メニューには目を背けた。

一巡目が順調に回転していくとオープンから25分で入店の案内があり、入口右手に置かれた券売機から決めておいたお題に味玉を追加発券してカウンターに腰を下ろした。間口の広い横長の店内を有効に活かしたカウンターから店内を観察してみるが、やたらと客席が暑いのが気になった。店内の大きさには不釣り合いな家庭用エアコン程の空調設備が両サイドに二台だけしか設置されておらず、厨房機器から発する熱量を処理しきれていないと感じた。夏場のピークは過ぎているので客席は何とか我慢できる暑さだが、厨房内はかなりと暑さと推測する。そんな店内を本日はオーナーを含め保谷店の店長を任されたスタッフの方など総勢三名で回しているが、私のロットを含めた二巡目が落ち着くまではオーナーの吉川さんが調理を担当されていた。まだまだ〝よしかわ歴〟の短い私には初めてのオーナー直々の麺上げだったので、気が付けば店内の暑さ以上に気持ちが熱くなっていた。ワンロット二杯を守りながら着実にオーダーをこなしていく調理工程に見とれていると、着席して8分で我が杯が到着した。

その姿は有田焼と思われる高台丼の中に収まっていたが、まずは中身よりも器選びのセンスの良さに驚いてしまった。食洗機を導入する店が多いので、必然的に口縁の厚い器を採用して食器の破損を防ぐ店が当たり前となってきている。そんな時代の中でも器に触れた唇の感覚や、器を愛でる楽しさを思い起こさせてくれる器に出逢えるチャンスはそう多くはない。それは多種多様なスープに合わせて変幻自在に器を操る、つつじヶ丘の人気店である「柴崎亭」の器選びのセンスに通じるものを感じた。さらには器だけでなく具材陣にも意表を突かれた要素を感じながらレンゲを手にした。

まずは弁柄色のスープをひとくち。初期値でも豊富な具材と香味油に覆われた液面にレンゲを沈めると、破れた油膜の隙間をぬって鶏油の香りに伴った鶏出汁ならではの野性味のある香りが立ち昇ってきた。私の知る限りの系列店では、これ程までに鶏を前面に押し出したスープを知らない。この保谷店をキッカケに新たなジャンルへの挑戦なのかと、期待を込めてスープを口に含んだ。すると世に出回っている〝またおま〟的な鶏油任せの鶏出汁ではなく、乾物などの複雑な旨みの重なりを感じる。その重なりの頂点にいるのは、まろやかな甘みで丸鶏由来のものと思われる。スープを器に張る作業を見ていて感動したのは、もう一つの看板スープである煮干系と地鶏系スープを沸かし直す雪平鍋も当然のように使い分けられていたのだ。同じ小鍋を使っても良さそうだが、それによってスープの風味が混ざらないように工夫されている。その上カエシを最初からスープに合わせてある仕込み方なのでロット毎による味ブレが少なく、冷たいカエシを合わせなくて良いのでスープの温度が下がらない利点もある。そのあらかじめ合わせてあるカエシは後客が食べていた煮干系と比べると地鶏系の方が醤油色素は強いが、塩分は上品に抑えられているので一切の喉越しにトゲトゲしさを感じない。そこには醤油の酸味が加わってくるので、鶏由来の甘みと醤油ダレの塩気と酸味が一体となってスープに重なりを付けている。さすがは〝鮮魚使いの匠〟として名高い吉川さんだが、動物系でスープを炊いても他にはない〝よしかわらしさ〟を打ち出しているのには恐れ入った。たまらずに飲み干してしまいそうな勢いだったので、冷静を取り戻してレンゲを箸に持ち替えた。

麺上げまでジャスト50秒の麺を持ち上げてみると、そこには代名詞とも言える、真っ直ぐでハリのある〝伸身のヨシカワ〟を思わせる中細ストレート麺ではない全く異なる形状の麺が現れた。よく見ると平打ちにも見える大きな切刃の番手で切り出しされた細麺で、麺幅と麺厚の比率が大きく違った麺だった。持ち上げた箸先には細身ながらも、しっかりとした重みを感じる。それは加水率の高さを想像させて、今まで系列店で出会ったオリジナリティのある麺とは違った個性を感じさせてくれる。箸先にはしなだれ掛かるような柔らかさも同時に感じ、自分が今よしかわにいる事を忘れてしまうような意表を突かれた麺質に映った。そんな不思議な感覚のままに一気に麺をすすり上げると、この時に先客方の多くも地鶏系を食べていたので全員の麺をすする音が大合唱となって店内に鳴り響いた。それは麺をすすった時に途中で噛み切る事を許さないような滑らかさで、今まで口当たりが良いと思っていた麺が鮫肌だったと思えるくらいの口当たりだった。もちろん自家製麺なので変幻自在に小麦粉とかん水を操って生み出された麺には独自性は表現されているが、食べ応えとしては好みに反した物足りなさを覚えてしまった。コシは残してあるので茹で過ぎとは思わないが、あまりのすすり心地の良さで麺を噛みつぶす喜びが伝わりづらくなっている。麺の熟成を少なくしてあるのかモッチリとしたグルテンの反発力は楽しめないタイプの麺となっている。

そんな麺質が大いに持ち味を発揮していたのは具材のワンタンで、保谷店では基本でもワンタンが入っているのも差別化された点である。独自の勝手気ままな〝ワンタン論〟である、読んだ字の如く〝雲呑〟は雲を呑むような食感が命だという持論がある。こちらのワンタンは肉餡を大きくして食べ応えに重きを置いた日式ワンタンではなく、肉餡を極力小さくして肉と香辛料の風味をワンタン皮に加える本場の中式ワンタンを思わせる。皮に余計な包みヒダを付けないように三角に折って包んだだけのワンタンは、まさに喉越しを通じて皮を楽しむタイプとなっていた。その滑らかさは麺にも負けない皮肌で、呑み込んだ瞬間のエロティックな感覚を忘れられない仕上がりだった。

今まで食べた系列店のラーメンとは明らかに違っていたのは〝よしかわのチャーシューと言えばレアチャーシュー〟ではなかった点だ。この事実には最初に大きな衝撃を受けたが、アンチレアチャーシュー派の私にとっては喜ばしい試みだった。しかも厨房内には吊るし焼き用の燻製釜が置かれてあるので、大好物の広東式焼豚ではないかと心が踊った。一見すると豚バラと豚肩ロースの二種類に見えるが、そのチャーシューの下には鶏ムネ肉も隠れているのだ。三種の中で最も淡白と思われる鶏ムネ肉から食べてみると低温調理といった仕上がりではなく、どちらかと言えば棒棒鶏に使われる蒸し鶏に近い。また短冊切りの形状もそれを思わせる鶏チャーシューは、短冊切りと言っても割り箸よりも太く切られているので食べ応えも十分だ。初動から熱々のスープに浸っていたので少し加熱し過ぎた舌触りもあるが、決してパサついた印象はなくスープとの相性も良い。続いて二枚入りの豚肩ロースか豚ウデ肉にも見える部位で仕込まれたチャーシューを食べてみると、しっかりと漬けダレが浸み込んだ吊るし焼き焼豚ならではの味わいが素晴らしい。広東式焼豚のように香辛料を含んだ蜜ダレ感は強くないが、余分な水分が抜けた赤身肉の持つポテンシャルを最大限に引き出してある。やや薄めにスライスされているので歯応えは少し足りなさが惜しいが、このチャーシューの切り落としがあれば是非にも食べてみたいと思った。次に豚バラの煮豚型を口にすると、見た目通りにバランスの良い赤身と脂身の層が織りなす旨みの重なりを味わえる。脂身の甘みと赤身の旨みは、完全に加熱される事でしか生まれない深い味わいを持っている。こんなチャーシューを知ってしまっては、さらにアンチレア派に偏ってしまいそうだ。

唯一の追加トッピングの味玉は、見た目の淡い印象からは思いもよらない旨みを蓄えていた。それは醤油感ではなく出汁感が強く現れていて、卵本来の旨みと共存しながら個性も打ち出している。過剰な色づきは見せないが、しっかりと浸透圧を利用して黄身の水分が程良く抜けた濃厚な味玉となっていた。

メンマには極太で長めのタイプで仕込まれていて、強めの歯応えが特徴的である。そのため若干の繊維質が残る部分もあったが、味付けがしっかりしているので咀嚼の回数が増えても不快な味気なさは出てこないので助かった。

薬味には煮干系とは青ネギの切り方を変えて、細長い笹切りで添えてあった。夏場のネギのせいかもしれないが、乾いた切り口が粗々しい舌触りとなってしまった。香り自体は飛んでいなかったので鮮度や切り置きの長さが原因ではないようだが、ザラザラした舌触りと食感が邪魔になってしまった。

中盤からもスープと具材陣には魅了されながら食べ進めてきたが、どうしても麺の食べ応えが自分には合わなかった。きっと麺量も多いのだと思うが、少しダレてしまった麺を少し残してしまい箸とレンゲを置いた。

もし味玉を追加していなかったとしても圧巻のフルボリュームで、この価格設定は経営努力の賜物だと思うと頭が下がる。店舗の外観や内装に費用をかけるよりも、お客様の口に入るもの全てに精力を注がれているのが垣間見えた光景があった。それは二巡目のオーダーが落ち着くと麺上げを店長と交代したのだが、すぐに煮干スープを炊いている大きな寸胴鍋の中に頭ごと突っ込んでスープの香りをチェックしている姿があった。更には自家製麺の出来が悪い部分を迷いもなく捨てる光景も見られ、心血を注いで打った自家製麺でも納得がいかない物は客の口に入れない姿勢には感銘を受けた。

今回は勝手な麺の好みが違ってしまい個人的な評価は高くはならなかったが、周囲の客人の笑顔を見れば大繁盛店となるのは明らかだ。上尾でも新店舗の準備が進んでいるようなので、次はどんな手を打ってくるのだろうかと楽しみが増えた一杯でした。

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